日本住宅基礎鉄筋工業会技術顧問ご挨拶

JHR技術顧問
東京理科大学
名誉教授 松崎育弘

    基礎は建築建物の荷重を地盤に安全に伝える重要な構造部分です。日本建築学会創立80周年記念として、日本建築学会構造標準委員会がまとめた「耐震建築構造要項」(1966年7月)では、木構造の基礎は、コンクリート造または鉄筋コンクリート造とし、建物外周、主要間仕切りなど構造耐力上重要な部分の基礎は、布状その他連続的もしくは一体的な構造とする。基礎に曲げ応力を生ずるおそれがある場合には、鉄筋コンクリート造の基礎とすることを求めています。

    それから40年が経ちました。ちょうど中間にあたる、つまり20年前から、住宅用コンクリート造布基礎の配筋システムとして、組立鉄筋工法が考案され、実用化がスタートしました。一般の住宅用基礎が、無筋コンクリート造から有筋コンクリート造へと脱皮できる起爆剤になりました。今日に至り、その技術はかなり広範に普及してきているという実感があります。

    このような情勢下に、スポット溶接によって組立てる住宅基礎鉄筋技術を支える業界団体として、「日本住宅基礎鉄筋工業会」が発足したことは、真に当を得た動きと思います。技術に裏付けられた新たな配筋システムの提案、そして、製品の品質管理技術の修得と実践、さらには、現場施工者への技術協力等々、やるべきことは多々ありそうです。住宅用基礎に生じる各種応力を算定して、鉄筋コンクリート造布基礎、ベタ基礎を設計する、つまり、鉄筋コンクリート造基礎を実現し普及するという、まだまだ長い道程もあります。

    発足して一年が経過しました。工業会設立の初心をここで改めて確認し、信頼される技術に立脚した住宅用基礎の現実に、大いに寄与していただくことを期待しています。