「ベタ基礎もどき」がなぜ生まれたのか

 ベタ基礎もどきとは、鉄筋コンクリート構造の基本が成立していない、ベタ基礎のように見えるコンクリートの塊のことです。木造住宅のベタ基礎の大半は、ベタ基礎もどきではないでしょうか。

 なぜ、このようなベタ基礎もどきが生まれたのか、それは前回解説したベタ基礎ブームが背景にあると思われます。木造住宅の大半は構造計算されていないため、建物重量が不明確、その状態で地盤判定を行うことはできませんが、無知な建築業者や建築士に地盤判定を迫られた地盤業者は、告示第1347号の地盤支持力と基礎形状の関係より、布基礎であれば最低限30kN/㎡の地盤支持力が必要であること、ベタ基礎であれば20kN/㎡の地盤支持力が必要であることを前提に地盤判定を行い始めます。当然、ベタ基礎判定の方が、地盤補強判定が少ないため、ベタ基礎判定が増えて来ました。

 ところが、布基礎ばかりつくっていた建築業者にとって、ベタ基礎はイメージできるけれど形状、配筋など構造的な要素は未知の世界です。しかし、地盤判定よりベタ基礎としなければいけない、ということで「それらしいベタ基礎形状の基礎」を勝手につくり始めます。

鉄筋コンクリート構造の基本はスラブ+基礎梁+スラブ四隅の柱

 ベタ基礎が鉄筋コンクリート構造であることを理解していない建築業者は、鉄筋コンクリート構造の基本である矩形のスラブ(耐圧盤)、スラブを囲う梁(基礎梁)、スラブ四隅に柱という形状を無視して好き勝手につくり始めます。当然、構造計算をしていませんから、基礎形状、配筋はデタラメです。

 基礎形状、配筋に関しては、右図に告示1347号にベタ基礎の仕様規定(最低基準)がありますが、仕様規定が最低基準であり安全基準じゃないことを理解していないと、仕様規定を満たせば安全な基礎と勘違いし始めます。このような状況は、嘘のようですが本当に行われており、今もなお続いています。

ベタ基礎の基本構造

 鉄筋コンクリート構造として成立していない「ベタ基礎もどき」の問題点を解説する前に、ベタ基礎の基本構造を確認しましょう。
繰り返しますが、ベタ基礎は鉄筋コンクリート構造です。鉄筋コンクリート構造の基本である矩形のスラブ(耐圧盤)、スラブを囲う梁(基礎梁)、スラブ四隅に柱という形状を逆さまにしたのが、ベタ基礎です。

 まず、ベタ基礎のスラブは、4P×6Pを最大として区画します(形状は矩形:四角形が基本です)。1Pを910mmとすると、3,640mm×5,460mmをスラブの最大区画とします。

 なぜ、この大きさなのか?理由は2つあります。

 ひとつは、建築学会の鉄筋コンクリート基準では、スラブ厚さの規定があり、スラブの厚さはスラブ区画短辺方向長さの1/30以上としなければいけません。一般的な木造住宅のスラブ厚さは150mmが多いので、150mmの×30倍=4,500mmが、スラブ短辺最大寸法です(5P:4,550mmに足りない)。

 もうひとつは、スラブ厚さ150mm、シングル配筋が木造住宅のベタ基礎には多く、この条件で構造安全性を確保するには、スラブ短辺方向は3,640mmがほぼ限界となります(多雪区域はより厳しい)。短辺方向3,640mmを超えてくると、計算上のスラブ厚さが不足してくる、スラブ配筋不足が発生してきます。

 これら理由から、ベタ基礎のスラブは、4P×6Pを最大として区画します。そして、ベタ基礎の四隅には必ず柱(木造部柱)が必要となります。

 次に、基礎梁について。基礎梁はスラブを囲う文字とおり「梁」です。梁は切断してはいけません。もし切断する場合は、梁が連続するように補強する必要があります。具体的には、スラブ区画を跨いで、隣のスラブ区画に移動するための人通口は、基礎梁を切断して構成します。基礎梁の連続性を確保するためには、地中梁などで人通口下を補強し、基礎梁の連続性を確保します。

 その他、ベタ基礎の基本構造には、基礎梁が負担する地反力による荷重、基礎梁設計用スパンのことなどなどありますが、今回は省略します。

ベタ基礎もどきの問題点

 鉄筋コンクリート構造として成立していない「ベタ基礎もどき」ですが、ベタ基礎の基本構造から具体的にどこが問題なのかをみてみましょう。

 スラブ区画について、スラブは4P×6P(3,640mm×5,460mm)を最大として区画し、スラブ四隅には柱が必要でしたが、まともにスラブ区画できる木造住宅はほぼ存在しません。

 通り芯がずれまくりスラブ最大区画で区画できない、矩形(四角形)が構造できない、スラブ四隅に柱がない、こんな状況です。しかし、ベタ基礎もどきの多くは、スラブを矩形に区切ることなく、スラブ区画不明確であったり、矩形(四角形)に区切っても、四隅に柱がなかったりします。

 次は基礎梁の連続性です。ベタ基礎もどきには、人通口部分の基礎梁切りっぱなしが多く見られます。地中梁などで連続性を確保していない状態です。そもそも、基礎梁は土台をうける立ち上がりとしてイメージされていて、スラブを囲う「梁」として認識されていません。したがって、人通口部分は梁を切断するという認識がないため、切りっぱなしの基礎梁が普通に存在しています。

 さらに、ベタ基礎もどきは、構造計算していないため、必要は鉄筋量が確保されているのかが不明確です。当たり前すぎることですが、鉄筋コンクリート構造の鉄筋量は構造計算で決めます。しかし、構造計算を行うことがほぼ無い木造住宅では、基礎の鉄筋を計算で決めるという概念を持たない建築士、建築業者が大半です。したがって、鉄筋量については、これまたデタラメに決めています。それを示す一例として、ベタ基礎もどきをつくる多くの建築業者は、建物の設計前に既に「標準のベタ基礎形状と配筋」が決まっています。スラブ区画に関係なく、厚さ、鉄筋量が決まっている。基礎梁の負担荷重やスパンに関係なく、断面寸法、鉄筋量が決まっています。こんな状況です。

仕様規定がどれくらい最低基準なのか

 ベタ基礎の最低基準である仕様規定(告示1347号)が、どれだけ最低基準なのかを検証してみました(スラブのみ)。

 スラブの厚さ12cm以上→12cm、スラブ配筋9mm以上、@30cm以下→D10@300での計算です。木造2階建てを想定して仕様規定のスラブがどの程度のスラブ区画の安全性を確保できているのかを検証した結果、1.6m角でした。1坪のお風呂のスラブすら安全性を保てていないレベルです。この程度の仕様規定を、安全レベルと考えているのは、とても危険なことなのです。

右図の丸の箇所では、スラブ最大区画で、区画できない、矩形(四角形)が構造できない、スラブ四隅に柱がないという状況になっている

ベタ基礎の最低基準である仕様規定(告示1347号)が、どれだけ最低基準なのかを検証

ベタ基礎もどきをなくすには、どうするべきか

 ベタ基礎もどきをなくすには、建築士、建築業者が構造の重要性を理解し、木造住宅も全棟構造計算するような意識改革が必要です。しかしこれはとても難しい・・・。

 「構造塾」を2010年より開始し、全国各地で建築士、建築業者向けに構造に関する勉強会を開催してきましたが、木造住宅市場が大きく変革する流れには到底なりません。そこで、2020年から、YouTube「構造塾」チャンネルを解説し、エンドユーザーに向けて構造安全性、耐震性能の重要性を伝えてきました。

 そこで、ベタ基礎もどきの問題点も公開したところ、エンドユーザーが、ベタ基礎もどきを理解し、建築士や建築業者に自邸の構造計算を促し(または、構造計算を標準としている建築業者を選ぶようになり)、ベタ基礎もどきは、ここ数年でだいぶ減ってきたように感じます。

 本来、エンドユーザーが安心して建築業者を選び、家づくりを進めて欲しいところなのですが、木造住宅業界にそれは難しいと感じています。残念ながらエンドユーザーひとりひとり(一家族、一家族)が、勉強し、自邸の安全性、耐震性、快適性などを守るべく、良い建築業者を選ぶために勉強は必要です。

 いつかは、ベタ基礎もどきもなくなり、エンドユーザーが安心して建築業者を選べる時代になってほしいものです。

■筆者 プロフィール
株式会社M’s(エムズ)構造設計
代表取締役社長 佐藤 実
一級建築士、構造設計一級建築士、農学修士(木質構造建築物基礎構法)、性能評価員ほか「構造塾」の運営(構造計算研修、相談窓口など)
構造塾には、木造住宅の構造計算や最新情報を学ぼうと全国の工務店・設計事務所、プレカット工場などが集まっている。またネットで「構造塾チャンネル」も好評。

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