木造住宅の構造を考える理由

 木造建築物の構造を考えるとき、一般的には大型の木質構造建築物を思い浮かべると思います。事実、木質構造の構造設計者の多くは、大型の木質構造建築物の構造計算を手掛けています。CLT、木造耐火、大空間、木造高層建築物、木質ラーメンなどなど、木質構造は幅広く展開しています。
しかし、木造建築物の多くは「木造住宅」です。一般的な木造住宅は階数2階建てまでの小規模なもので、毎年40万棟程度建築されていて、その木造住宅の中では「人」が最も多くの時間を過ごしています。
 この木造住宅は人の命を守る事が出来る構造になっているのか?

この視点で見てみると、胸を張って「命を守れる」とは言えません。特に耐震性能のレベルはとても低く、大地震のたびに木造住宅は倒壊被害を繰り返し、そこに住む「人」の命を奪い続けています。
この状況から、まず目を向けるべきは「木造住宅」と考えています。そこで、ここでは木造住宅の構造と基礎、基礎に関連する地盤、それらを取り巻く建築業界の状況、法律の整理や法改正の状況などなど、幅広い情報発信を考えています。まずは、「木造住宅の構造と基礎」の基本を整理していきます。

 一般的な木造住宅は、建築基準法上の4号建築物(建築基準法第6条第1項4号)で、構造安全性検討方法は簡易検討である仕様規定の遵守が基本となります。仕様規定のうち、基礎に関しては建築基準法施行令第38条に規定されていて、平成12年建設告示第1347号にも紐付いています。
 令38条(基礎)には、「建築物の基礎は、建築物に作用する荷重及び外力を安全に地盤に伝え、かつ、地盤の沈下又は変形に対して構造耐力上安全なものとしなければならない」とあります。4号建築物では基礎含め構造計算(許容応力度計算)を求められていませんが、令38条を読み取る限り、構造計算を行わずに「構造耐力上安全なもの」とすることは出来ません。

異種基礎禁止の誤解

 令38条第2項には「異種基礎禁止」があります。この異種基礎禁止は「布基礎とベタ基礎の併用禁止」と誤解されています。この異種基礎とは「杭基礎と直接基礎」の併用禁止のことを指しています。

 杭基礎とは、鉛直荷重と水平荷重の両方を杭に負担させる基礎です。
 直接基礎とは、鉛直荷重を地盤または杭に負担させ、水平荷重は杭に負担させない基礎です。直接基礎では水平荷重を基礎と地盤の摩擦力や基礎の根入れ部分の土圧などで負担します。
 木造住宅の場合、建物自体が軽量で水平力である地震力が大きくないため杭に地震力を負担させる必要はありません。地盤補強があったとしても、地盤補強には鉛直荷重を負担させ、地震力は基礎底版と地盤との摩擦力、根入れ部分の土圧で十分負担できます。事実、地震被害調査を多数行っていますが、木造住宅の地震力が大きすぎて基礎と地盤の隙間があいている状況は見たことがありません。その前に、上部構造が損傷し、倒壊しています。
 話は戻します。このように、荷重負担が異なる基礎の併用禁止が異種基礎禁止の意味です。
よって、直接基礎である布基礎とベタ基礎は併用出来ます。

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