告示1347号は最低基準であり最適基準じゃない

 次に令38条3項では、告示1347号の仕様規定の遵守が規定されています。告示1347号には、布基礎、ベタ基礎の基礎断面、配筋、立上り高さ、根入れ深さなどが具体的に仕様規定として規定されています。

この仕様規定を「最適基準」と誤解している建築士や建築業者が多くいます。それは大きな間違いです。仕様規定は「最低基準」であり、「これを下回る基礎をつくってはいけない」という基準であり、仕様規定を守れば「安全な基礎」ではありません。この誤解があるため多くの建築業者は間取りが決まる前から「基礎形状と配筋」が既に決まっています。この異常事態が木造住宅の現状です。
 まず、基礎形状は、上部構造の設計が決まり、地盤状況により決定します。建物重量と地盤支持力の関係で見れば、地盤が良好であれば「布基礎」、地盤が軟弱であれば「ベタ基礎」で建物重量を分散します(接地圧を小さくする)。地盤がさらに軟弱であれば、地盤補強を行い「布基礎」で良いことになります。布基礎の場合は、防湿の措置は必要となります。
 この基本を無視して、「ベタ基礎標準」という建築業者が多く、更には「未だに布基礎を採用している建築業者は、時代遅れ、技術力なし」などとも言っています。そもそも基礎形状は時代や流行りで決まるものではなく、ベタ基礎ありきのほうが技術力なしと言えます。
 まあ、ベタ基礎標準は百歩譲って良いとしても、最も問題なのは(繰り返しますが)「ベタ基礎断面と配筋が既に決まっている」ということです。

平成12年建設省告示 第1347号

  • 耐圧版の厚さ、鉄筋量が建物重量と耐圧盤の大きさに関係なくいつも一緒そもそも「耐圧版」との概念なし
  • 外周部基礎梁、内部基礎梁断面が、建物重量、基礎梁スパンや負担面積に関係なくいつも一緒
  • 立上りが「基礎梁」という概念がなく、連続性を考えていないため人通口部分が切りっぱなしで連続性なし
  • 耐圧版区画の概念なし、基礎梁と単なる立上りの概念なし
  • 鉄筋コンクリート構造の理解がないため、どこの何を計算しているか不明

と、挙げだすときりがないほど木造住宅の基礎は問題だらけです。

この異常事態の打開策をこの連載で考えていきたいと思います。

■筆者 プロフィール
株式会社M’s(エムズ)構造設計
代表取締役社長 佐藤 実
一級建築士、構造設計一級建築士、農学修士(木質構造建築物基礎構法)、性能評価員ほか「構造塾」の運営(構造計算研修、相談窓口など)
構造塾には、木造住宅の構造計算や最新情報を学ぼうと全国の工務店・設計事務所、プレカット工場などが集まっている。またネットで「構造塾チャンネル」も好評。

地震による住宅被害が頻発する今日。木造住宅の耐震性向上のための構造と構造計算普及のために活動している「構造塾」主宰・佐藤氏。木造住宅の構造と基礎の良い関係を築くためにはどうすべきかについて考えていきます。

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